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■とても長いキャリアをお持ちですが、モチベーションを保つ秘訣は? 引退を考えたことはありますか?

生涯現役でDJし続けるつもりだよ。DJすることを愛しているし、愛していることを仕事に出来ているんだからね。年々、情熱が増している気がするよ。

 

■DJを始めたきっかけは?

きっかけはとても単純で、人を楽しませたかったからなんだ。俺のチョイスで、みんなが笑顔になるのを見ると、それがモチベーションになるんだ。昔のマンハッタンのディスコや、ブロンクスでのKool Hercのパーティーは、もっともっとDJをしたい!って思わせるクールなモノだったね!

 

■MCやブレイカーになろうとは思わなかったのでしょうか?

DJのパイオニアと呼ばれている人たちは、みんな昔はブレイカーだったんだよ。もちろん俺もね。でも、ブレイカーとしてキャリアを築こうとは思わなかったな。DJすることに夢中だったからね!

 

■世界中で客演されていることと思いますが、中でもお気に入りの国はどこですか?

そうだなぁ。イギリスはクールだし、アムステルダムは一度は行くべき国だね。ドイツやフランスはまぁまぁで、カリブの国々も悪くないなって、カリブは俺のルーツだから当たり前か! そして、もちろん日本だよ。ベストな国は最後に残しておくべきだろ。インタビューされているから日本をあげている訳じゃなく、来日の度、本当にエンジョイしているんだ。日本からはたくさんの愛を感じるし、DJとしてだけではなく、俺自身を本当にサポートしてくれているからね!

 

■最近のHip Hopシーンにおけるサウスの勢いは目を見張るものがありますが、その理由は何だと思いますか?

みんな忘れがちなんだけど、アメリカの大半の地域は”田舎”なんだよ。だから”サウス”と呼ばれているジャンルは、ワイオミング州のような中西部の人間にも共通点が多いんだ。裏庭でのBBQや週末のスポーツ観戦とか、日常をリリックにしているサウスミュージックは、アメリカの大半の生活そのものなんだ。だから多くの支持を得ているんだと思うよ。ニューヨークやL.A.のように独自のスタイルを保持するのは少数の州で、残りの地域をサウスがレペゼンしている状態だと言えるんじゃないかな。

 

■イーストコーストHip Hopを復活させようと意気込んでいるようですが、彼らに必要なことは何だと思いますか?

Hip Hopはニューヨークで生まれた文化だから、イーストコーストの人間はそのことをすごく誇りに思ってきたんだ。でも残念なことに、最近は誇りが驕りに変わってしまった。ウエストコーストを拒否したことに始まり、今はサウスを受け入れる柔軟性がない。サウスは、イーストコーストをリスペクトしてきたから、拒否されても友好的だけど、でも自分たちのスタイルを確立してたくさんの人間に支持されているだろ。もう一度言うが、サウスミュージックは、少数の大都市を除く地方の人間が共感できる音楽なんだ。だからこんなにも支持されているんだと俺は確信しているよ。

 

■注目している新人アーティストはいますか?

たくさんの地域から実力のあるアーティストが出てきているね。アンダーグラウンド、ギャングスタ、ポップ寄りといろいろなジャンルのHip Hopがあるけど、残念ながら、個々のシーンでしか受け入れられていないんだ。ニューヨークのクラブを例に挙げると、Mos DefやLupe Fiascoの曲をBusta RhymesやJay-Zの曲が流れるクラブで耳にすることは皆無に等しいんだ。Mos Def、Lupe Fiasco、Common、Talib KweliあたりのファンとJay-Zや50 Centのファンは全く別物だからね。昔は、みんな一緒に楽しむことができていたのにな・・・。俺は、全てを受け入れてこそHip Hopだと思ってる。R&Bにも同様のことが言えて、Ne-YoやChris Brownと同じように、どうしてR.Kellyも流さないんだってね。

 

■昔のアーティストに影響を受けた新人もたくさんいると思うのですが・・・

同感だよ。でも、あくまで個々のジャンルでの影響だろ。サウスの話をしたから、そこを例にすると、最近学んだんだが”サウスミュージック”と”クランクミュージック”は別物として認識されているんだ。カテゴライズするんじゃなく、”Hip Hop”という括りで何で楽しむことができないんだろうな。クランクが流れるクラブでBusta RhymesやIce Cubeが流れたっていいじゃないか。一晩中クランクばっかりじゃなく、他のHip Hopも受け入れてほしいね!

 

■日本のクラブでは、リージョンに関係なくHip Hopを流していると思うのですが・・・

ニューヨークではクラブによって違うんだよ。Lil JonやOutkastあたりは、コマーシャライズされて知名度も全国区だけど、他のアーティストはどうだ?サウスをターゲットにしてメイクマネーしすぎたやつがいるから、それ以外に注目が集まらないんだよな!

 

■エアプレイ回数とセールスが比例すると言いますが、どう思いますか?

残念ながらその通りだね。今のこのスタンスは、本当に実力のあるアングラのアーティストの露出の場を取り上げてしまっているんだ。音楽とは関係の薄い企業がラジオ局を買収するまではいいんだが、彼らはどうプログラムを組んでいいのかわからない。そうすると、企業はリサーチ会社に”流行”の調査を依頼する。結果、同じような音やスタイルが上がってくるってワケだよ。まさにその悪循環がラジオの現状なんだ。ラジオ局を買収したり、リサーチ会社に依頼できるのは、ほんの一握りの大企業だけだろ。例えば、ソニーグループはコロンビアを、ユニバーサルはDef Jamをという具合に傘下に置いていて、プロモーション費も相当な額が用意されているんだ。でも、インディーズはどうだ? インディーズには、素晴らしいアーティストや楽曲が埋もれているが、それらは自動的に”アングラ”としてカテゴライズされてしまうんだ。アングラアーティストのみを集めた”Underground Music Award”というのがあるんだが、そのアワードが唯一の露出の場と言えるんじゃないかな。ちなみに、私は今年のこのアワードで”Life Time Achievement Award”を受賞したんだ。時間は掛かったけど、私の功績が認められたってコトだろ。嬉しいね。アングラのアーティストが全国区にのし上がるのは時間がかかるが、でもストリートは常に彼らをリスペクトしてるんだよ!

 

■確かそのアワードでPapooseが新人賞を受賞していましたよね?

そうそう。Papooseには、DJ Kay SlayやBusta Rhymes、Flipmode SquadにViolatorと強力なバックアップが付いているだろ。名前が先に認識されているアーティストというのは、大体大きなバックアップがついているモノなんだ。Papooseはスキルがあると思うが、彼がこんな風に出てこれたのは、彼の周りの著名なアーティストの力が大きく関係しているんだ。例えば、ノースキャロライナ出身のアーティスト、Little Brotherなんかは、もっともっと認知されても良いハズの素晴らしいアーティストだ。でも、彼らは著名なアーティストの傘下にいるわけじゃないから、露出が少なくて、認識されるチャンスを得るのが難しい状況なんだ。

 

■Little Brotherのアルバム『Little Brother』はマイク5本獲得していましたよね?

その通り。でも、最高の評価を得たって、彼らのアルバムが流行りのアーティストと同等にセールスを記録していないだろ? Talib Kweliが認識されるのにどれくらいかかったか思い出してみてくれよ。Commonはどうだ? 彼は、認識されるためにコンセプトを若干変えただろ。コマーシャライズされた世界では、アングラをすんなり受け入れる器がないんだ。私が98.7 KISSでDJしていた頃は、アングラのアーティストをたくさん流すことができた。そのアングラ発のレコードは後にクラッシックとなり、今だにヘッズに愛されている。当時は、”誰の曲だから”とか”流行”とか関係なく、”楽曲”のクオリティで判断していたんだよ。オールドスクールには、プラチナセールスを記録したことがないアーティストがたくさんいるんだよ。例えばKRS-One。彼はゴールドセールス止まりだけど、常にスタジアムのチケットは完売だよ。彼には、フォロアーがたくさんいて、この事実はセールスが必ずしも全てではないという証だろ。80年代~90年代初頭のアーティストやリスナーは、本当の意味でのリアルなヘッズだったと思うね。

 

■Hip Hopとビーフは表裏一体で、ビーフは大事なプロモーションソースになっている状況をどうお考えですか?

嫌気がさすね。他人を非難して有名になろうなんて方法としておかしいと思わないか? Hip Hopの歴史上、競い合うという行為は常に存在していたよ。誰がMCとして優れているか、DJとしてスキルがあるか・・・ってね。でも、誰も暴力で解決するヤツはいなかったんだ。例えば、俺とMr.Magicのバトルは、マジックの仲間だったRoxanne Shanteと俺の仲間だったSparky Deeのビーフにも発展して、最終的には、Boogie Down Productions vs. Juice Crewのチーム戦になった。俺たちは、決着のつけ方として、同じステージに立つことを選んだんだ。つまり”バトル”はあったけど、”問題”は無かったんだよ。その後、Mr.Magic、MC Shan、KRS-Oneと一緒にスプライトのコマーシャルに出演するまでの仲になったんだ。現在のビーフはそうじゃないだろ?エゴやプライドが肥大化しすぎているんだよ。くだらないのは、ディスり合っている当人同士よりも、周りの方がヒートアップしていることだな。Busta Rhymesの側近がLloyd Banksの側近に射殺されただろ。でも、被害者と加害者の間には何のビーフも無かったんだぜ。若いヤツらには、是非『Beets Rhymes and Battles』というDVDを観て欲しいね。さっき話したBoogie Down Productions vs. Juice Crew、LL Cool J vs. Kool Mo Dee、MC Lyteのバトルが収録されていて、俺たちがどう決着を着けてきたか理解できるハズだ。MCはマイクで勝負するのが本物だ。それ以外の対決なんて私は認めない。

 

■DJとして大切なことは?

DJは”パイドパイパー”みたいなモノだ。イイ音を流せば自然と人が付いてくるし、ワックな音を流せば人は離れていく。DJしているときに、誰も踊っていなかったり、ヘッドバングしていなかったら、勉強しなおさなきゃダメだ。自己満足は醜いぞ。練習無くして完璧は生まれない。だから、日々練習するんだな

 

■日本のファンにメッセージをお願いします

DJ、MC、プロデューサー。何を目指すにしても、客が何を欲しているかを感じ取れる力を付けることが大事だ。そして、このビジネスの真髄を理解する努力も忘れちゃダメだぞ!

 

Interview & Text: sassyism