Lord Jamarの「白人ラッパーはHip Hop界ではゲストだ」という発言や同性愛者に対する差別発言に対して、何人かのアーティストが異論反論を唱えて話題になったので、Lord Jamarの発言と複数人いる中からSchoolboy QとYelawolfの見解の動画と日本語訳を掲載しました。
Interviewer: Hip Hopがゲイに対して寛容になったと思いますか?
Lord Jamar: まずは、Hip HopとRapを分別することから始めたいね。オレにとってこの2つは異なるものだからな。Hip Hopはメッセージ性があり、生き方であり、エレメンツ(5大要素)を含むものだ。Rapは、金を稼ぐことが主軸であり、韻を踏む言葉を羅列しているものだ。そう考えると、Rapはゲイに対して寛容だと思うし、金持ち音楽と言ってもいいな。Rapは”持っていること”を、Hip Hopはその逆で”持っていないこと”を表現しているだろ。その拝金主義の世界で、金持ちの多くはホモセクシャルである可能性が高い。ファッション業界が良い例だろ。彼らと膝を突き合わせる内に、彼らに居心地の良さを与えたいと思い始めて、それによって自分自身も和らぎたいと思うかもしれない。相手に居心地の良さを与えるという目的の為に一線を越えて、自覚することなく”向こう側”に立っているのかもしれないし、または、それこそが自分が求めていた姿なのかもしれない。そこに関してはオレが知る由もない。でも、それはHip Hopだとは言えないね。これだけは言い続けるぜ
Interviewer: 同性愛者について歌ってるMacklemoreの「Same Love」がHip Hopの未来に どんな影響を与えると思いますか?
Lord Jamar: どんな影響を与えるかなんてわからないな。彼の才能やスキルは認めるよ。ラジオから流れる彼の曲で、ドラッグのオーバードーズをラップしたものがあったが、ドープだと思ったな。彼の音楽は嫌いじゃない。でも……、オレの発言自体が自分の首を絞めることになるかもしれないが、知ったことじゃないな。言いたいことを言うだけだ。白人ラッパーたちは、Hip Hop界における「ゲスト(=客人)」だ。いくらヒット曲があるからといって、意見を述べる権利は無いと思ってる。オレ個人の意見としてはな。Hip Hopカルチャーをきちんと学んで、Hip Hopを愛する白人ラッパーたちよ、オマエらはHip Hopが黒人のものだということは理解しているハズだろ。(Hip Hopは)オレたち黒人が始めたことであり、オレたちのモノだ。スキルを証明することのできた白人たちに、この世界の通行証を与えたのはオレたちであり、そのお陰で(白人ラッパーたちは)スタイルを披露し、有名になるチャンスを得たんだ。Hip Hopカルチャーに十分な敬意を払えるヤツらは認めるが、あまり調子に乗るなよ。あんな曲を作るのは、まるで、自分が他のHip Hopアーティストと同じ立場にいると錯覚しているからこそかもしれないが、オレは認めるつもりはない。他人の家にお邪魔して、そこの家主が洋服や食事を与えてくれたとしても、他人の家であることには変わりはない。だから、その家のしきたりを語り始めるほどには”くつろぐ”ことはできないということだ。オレの言ってることが理解できるか?例えば、ビザを得て外国に5年住もうが、選挙権は与えられないだろ。何で投票することができないかって?なぜなら、その国にはその国の決まりがあるからだ。その国に居住しているとしても、その国の一部になったとは言えない。MacklemoreがHip Hopを愛していることは理解しているし、”白人”としてああいう曲で信念を押し通すことは許容できる。しかし、この曲の示す傾向や感覚は、真のHip Hopの根幹には存在しない。だから、オレの縄張りで好き勝手発言することは許せないね。
ある種の人間には話してるんだけど、興味深い偶然を見つけたんだ。エジプト人がいて、エジプトの神を盗んだギリシャ人がいる。現状では、ギリシャの神のみが認知されていて、エジプトの神を語るものはいないだろ。でも、ギリシャの神々は、エジプトの神の模倣なんだ。なぜなら、(ギリシャの神々はエジプトという)元祖から盗まれたものだからな。長きに渡りギリシャの神のみが崇められていたら、元祖であるエジプトの神を忘れてしまうだろ。
話が逸れているように思うだろうが、最後にはきちんと話が通るからな。
Action Bronsonのようなラッパーがいる。実のところ、オレは彼のことは好きなんだ。彼のスタイルがGhostface Killahのようだってってコトは周知の事実だろ。それはまるで、(Ghostface Killahが)オサイレス(http://www.egyptianmyths.net/osiris.htm)(*エジプト神話の中の神の1人)で、Action Bronsonがゼウスみたいなものだ。ゼウス(=Action Bronson)はオサイレス(=Ghostface Killah)に憧れて、影響を受けていても、ゼウスばかりが前面に出ることによって、彼を尊敬する白人の若いヤツらは、(Action Bronsonが)そのスタイルの元祖だと勘違いし、彼の真似を始める。オリジナルである Ghostface Killahの存在を知らずにな。Hip Hopだけではなく、黒人音楽全般が”白く”転換してしまっているんだ。Justin Timberlake、Justin Bieber ・・・Iggy Azaleaは人気が出るだろうな
上記のLord Jamarの発言に対するSchoolboy Qの見解
Interviewer: Lord Jamarの「白人ラッパーはHip Hop界ではゲストだ」という発言をどう思いますか?
Schoolboy Q: とても差別的だし、口にすべきじゃなかったと思うな。オレたちが始めたからと言って、他の人が参入できないなんて間違ってるだろ。バスケットボール、フットボール、野球はどうなんだよ。無知だと思うね。Hip HopはHip Hopだろ。苦労しているのは黒人だけじゃないし、とにかく無知だと思う
上記のLord Jamarの発言に対するYelawolfの見解
Interviewer: Macklemoreの成功について意見を聞かせてください。
Yelawolf: 誰にでも居場所はあると思うね。オレは常に白人ラッパーたちの在り方を見て来た。それは、オレが足を踏み入れた世界における”白人ラッパー”という産物を守りたいと思う気持ちが強いからだし、”白人ラッパー”というサークルの居場所を確保したいと思っていたからだが、状況は変化しているし、もはやそんなことは関係無いと思ってる。オレがこの世界に足を踏み入れた当時、オレがリスペクトを得るためにフッドのクラブに行くように、同じことをしている若い白人はいなかった。(現在の白人ラッパーたちは)オレと同じ道を歩んできてるわけではないから、オレの(白人ラッパーとしての)在り方と比較することは不可能だよ。当時、オレがつるんでた仲間や、その時にやっていたこと、いかにしてオレが道を開いたか、どれも全く異なるものだ。だから、彼の成功についてどう思うかを問われても、正直何とも思わないっていうのが本音だ。彼のスタイルをあまり理解していないからな。オレにとっては(彼のスタイルは)よりポップなものだと思ってる」
Interviewer: Macklemoreはより白人層に向けたスタイルだと思うんだけど。
Yelawolf: 言いたいことは理解できるよ。だけど、現状を見る限り、白人、黒人というよりも、金銭的な括りだと思うな。重要なのは、どれだけ金を持っているか、住んでいる場所で、それによって、遊びに行くクラブ、好きなアーティスト、洋服のスタイル、気になる事柄が決まってくるだろ。ナッシュビルやアトランタには、未だにストリート、フッドなカルチャーが存在してる。それは(彼らにとっては)全くの別世界なんだよ」
Interviewer: Lord Jamarの「白人はHip Hopにおけるゲスト(=客人)だ」という発言についてどう思いますか?
Yelawolf: ある意味では正しいと思うよ。彼の視点で考えると同意できるよな。正しいと思うよ。アメリカ黒人の芸術、音楽において、白人アーティストがゲストであるということは疑う余地はないと思うよ。Hip HopやBlues、はたまたRock’N'Rollにおいて、な。もしそれくらい掘り下げて考えるのならば、の話だけどな。そう感じるためには、相当昔に回帰して考える必要があると思うね。原点回帰した視点で言うのなら、オレたちがゲストであることには変わりない。Lord Jamarは、(Hip HopはLord Jamarを含む)黒人が作った家だと言ってるだろ。でも、その家は、数世代に渡り借家になり、改装され、変化し、黒人、白人、アジア人、世界中の人々がその家を訪れ、居住し、使用し、時には悪用し、修繕した結果、現在では違う家に形を変えているんだ。誰が最初にブロックを積んだか、という部分は問題ではなくなっているんだよ。家自体がより良いものに進化したという事実を受け入れる必要があると思うね。異なるアイディアが持ち込まれることで、新たな窓や屋根が取り付けられ、あらゆる部分に変化をもたらし、以前にも増して住みやすい環境を作ってきているんだ。視点の違いだよな。これがオレの視点だよ。白人ラッパーとしてゲストの視点もの申すなら、決して楽しい”お泊まり会”だとは言えないってコトだ。(笑)。オレにとっては、誰かがレッドカーペットを敷いてくれるようなものではなく、居場所を確保するために戦わなければいけなかったからな。でも、まぁ、それが現実だ
Interviewer: Lord Jamarは「Hip Hopにはホモセクシャルの居場所はない」とも言っていますが、それについては?
Yelawolf: (Hip Hopに)ホモセクシャルの居場所が無い、という発言は無知以外の何者でもないと思うね。黒人、白人、人種に関係無く、バカげてるよ。何言っちゃってるの?って感じだ。これは音楽であり、何を題材にするかは個人の自由であり、それが最大の魅力だろ。次は何を言うつもりだよ?Rock’N'Rollが、異性愛や同性愛、政治を語るのは厳禁とか言い出すつもりか?冗談じゃないね。自分が題材にしたいことを自由に発信するだけだろ。その曲が好きか、嫌いか、それだけの話だ。(Macklemoreは)ホモセクシャルを語りたいからそれを題材に選んでいるワケで、好きにやらせてやれよ。それが全てだろ。それに、曲がヒットしているという事実は、多くの人間が共感しているってコトだよ。黙ってろよ、って感じだな。(笑)
Translated by sassyism