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■今回で何度目の来日になりますか?

何回目だろう・・・10回以上来日しているよ。

 

■来日の度に日本の印象は違いますか?

そうだね。来日する度、新しい発見がある気がするな。日本人は、音楽を愛している人が多いと思うし、レコード屋の品揃えも豊富だよね。あとは、日本でショッピングするのが大好きなんだ。人も皆優しいしね。

 

■特にお気に入りのお店はありますか?

マンハッタン・レコードは絶対行くね。あとは、ナッツ&ボーンの商品を置いている店に行ったよ。ナッツ&ボーンがJungle BrothersのTシャツをデザインしてくれたんだ。クールだよな!

 

■洋服のブランドにも興味を持たれているとお聞きしました。日本のみの展開ですか?

とりあえず日本からスタートさせようって話になったんだ。2社からオファーされていて、どっちにしようか悩み中(笑)。ニューヨークでは、今スポンサーと話を詰めている段階なんだよね。

 

■注目している日本のHip Ho@アーティストはいますか?

今回に関して言えば、何曲か面白いレコードがあったんだけど、名前が思い出せないよ。昨日遊びに行ったクラブでDJ Mayumiがスピンしていたんだけど、彼女はすごくイイね。流行の曲からレゲエ、オールドスクールと新旧織り交ぜたおもしろいセットだったと思うよ。Jungle Brothers の『JB Coming Through』も流してくれたし(笑)。他には、京都で活動するラッパーKyoto-Kってヤツもいい感じだったな。あとは……。あ、昨日のPartyでMCやっていたJiro (C2C Entertainment)も面白かったよ。俺のショーでもMCやってくれる予定なんだ。

 

■Jungle Brothersの名前の由来は?

ニューヨークは車や高層ビルが密集していて、人口過密地帯だ。つまり、コンクリートに囲まれたジャングルだろ。だからJungle Brothers(笑)

 

■Jungle Brothersとして1980年代後半から活躍されていますが、常に新しい音を追及しつつも、絶対的に変わらない”何か”を感じます。イメージを移行していくアーティストが多い中、Jungle Brothersは”新しい”けど”古い”というか・・・

あ、解ってくれてる?Jungle Brothersとしてイメージを大切にしてる部分はあるよ。でも、プロデューサーとしてソロアルバムを創るにあたって、スタイルは確実に変わってきているよ。”今風”って感じの出来かな。ソロとグループの違いを感じてくれると嬉しいね。

 

■ソロアルバムのリリースはいつですか?

来年の2月だよ。プロモーションは年末から始めようと思ってる。レコード屋や洋服のラインなんかもリンクさせて展開していく予定かな。

 

■ジャングル・ブラザーズの前作で、ゴダイゴの「Monkey Magic」を「Funky Magic」としてカバーされてましたよね。衝撃でした。元々この曲をご存知だったんですか?

プロデューサーがこの曲を持ってきたんだ。あとTV番組(西遊記)もね。ロンドンで視聴率が高かったらしいよ。トラック聴いて、ラップ載せてみたらイイ感じだったから、採用!って感じかな。プロデューサーとはそれからの付き合いなんだ。

 

■最近のHip Hopシーンについて意見を聞かせてください。

常に情報をアップデートするように心がけているよ。色んなアーティストと仕事をするようにしているしね。USでは、サウスのHip Hopがすごくアツイだろ。俺のソロアルバムでもそのスタイルを取り入れているんだ。サウスHip Hopは、昔のHip Hopを思い出させると思うよ。ドラムマシーンやハンドクラップ、キーボードにキャッチーなライム、それにみんなが協力し合っているってトコは、Hip Hopの初期の頃によく似てると思わない?俺の時代のアーティストはそこに気付いてないヤツが多いんだよね。受け入れたくないっていうかさ……。でも実際は、サイクルしているだけなのにな。Run DMCのレコードや、プラネット・ロックを聴いてみたら、同じドラムマシーンだって気付くハズだよ。プラネット・ロックはマイアミベースを創って、マイアミベースはクランクに発展した。それが今の流行で、みんなその相互関係に気付いてないんだよな~。クランクは、マイアミベースのピッチを遅くしたモノなのに・・・

 

■サウスとイーストコーストの決定的な違いを挙げるとしたら?

そうだなぁ。イーストコーストというかニューヨークのラップは、過去の栄光にしがみついている感じがするよな。Swizz BeatzやJust Blaze(ジャスト・ブレイズ)は例外だけどね。彼らは、T.I.や他のアーティストと仕事しているしね。でもほとんどのアーティストは、ニューヨークのスタイルに固執し過ぎてる気がする。NYではそれでいいかもしれないけど、サウスでは通用しないよ。っていうか、ニューヨークのラップって無駄に言葉が多くない(笑)?

 

■リリックに重きを置くリスナーはいないってことですか?

うーん。やっぱりキャッチーじゃなきゃダメだよね。サウスのHip Hopってとにかくキャッチーなライムが多いだろ。ビートに乗らなきゃダメ・ダメ!

 

■ソロアルバムには、Rick Rossも参加されているとお聞きしましたが

そうそう。その曲は俺のMySpaceのページにアップされているよ

 

■現在、マイアミ在住ですよね?

生まれも育ちもブルックリンだけど、10年前にマイアミに引っ越したんだ。それ以来、Rick Rossや彼の周りのアーティストと仕事しているよ。みんな俺のソロアルバムでフューチャしている要チェックだな。あと、マイアミのMix TapeチャンピオンのDJ 2 Nenとも一緒に何かやろうって話になってるんだ。ちなみに、アトランタにも家を持っているよ(笑)

 

■ニューヨークを出ようと思ったきっかけは?

Hip Hopシーンがつまらなくなってきたから! ニューヨークはニューヨークのことしか考えていないしね。変化することを拒否しているように感じたんだ。ラジオから聴こえてくる音楽のほとんどは、サウスやミッドウエスト(セントルイス、デトロイト、シカゴなどの中西部)の音だろ。アメリカを代表する大都市なんてほんの数箇所で、後は基本的に田舎だから、サウスやミッドウエストの音の方が支持されるんだよ。10年前にニューヨークを離れたときに、シーンは確実に変わってきたって思ったけど、ニューヨークはその流れに乗り切れてなかったんだ。

 

■現在の”流れ”を上手く利用していると思えるニューヨークのラッパーといえば?

50 Centじゃないかな。50 Centはサウスのスタイルを取り入れていると思うよ。彼はビートに上手く乗ってライムするしね。すごくキャッチーなスタイルも解りやすくていいと思う。あと”ニューヨーク”は連呼しないけど、ニューヨークのアーティストが共感できるネタをライムするあたりも◎だね。50 CentはDr.Dre、Eminemと仕事しているだろ? つまり他の地域のスタイルも上手く取り入れているってことなんだよ。ニューヨークには日の目を見ないアングラのアーティストがたくさん存在していて、彼らは”古き良き時代のニューヨークを取り戻そう!”って躍起になっているみたいだけど、彼ら自身が変わらなきゃダメだと思うよ。その点、プロデューサーは柔軟性があるよね。色んなビートを創るし、スタイルも変幻自在。あと、色んなアーティストと仕事する機会に恵まれているからね。でもラッパーは、今イチ理解できていない気がする。サウスは、独自のスタイルを築いて、それが一大ムーブメントになっているだろ? とにかく協力し合うんだよな。彼らの音楽は、”楽しむ”ことに重きを置いているから、暴力的じゃないし、クラブで流しやすいんだ。SexとParty! Lil JonやYing Yang Twins が解りやすい例だよ。Sex、アルコール、洋服、車…… 暴力反対! ギャングスタラップ反対!(笑)。だから全国区にのし上がれたんだと思うよ。女の子にも共感されるし、ラグジュアリーな車にプリッケツのかわい子ちゃんがいっぱいのPVは、男なら誰だって憧れるだろ!

 

■ニューヨークのサグな雰囲気が恋しくなったりしませんか?

俺はニューヨーク出身だけど、祖父母はサウスの出身なんだ。だから、昔からサウスにはよく遊びに来ていたし、色んなスタイルを取り入れることは俺にとってはごく自然なこと。その内、ニューヨークが恋しくなるかもしれないし、ニューヨークのスタイルがまた主軸を担う日が来るかもしれないけど、現時点では有り得ないね。ニューヨークのアーティストでプラチナセールスを獲得しているのは、50 CentとBusta Rhymesくらいだろ。2年間でたった2人って少なすぎるよ。それとは対照的に、Lil Jon、Mike Jone、Paul Wall……思いつくサウスのアーティストはみんなプラチナセールスを記録してる。これが現実なんだよ。

 

■サウスが流行り始める少し前に、Trick DaddyのドキュメンタリーDVDの映像翻訳の仕事をしたのですが、PV撮影、レコーディング、プロモーションと、レーベルメイト以外のアーティストでも奮って参加していたことが非常に印象的でした。結束が固いというか

そうなんだよ! 最高のビジネス展開だと思わない? 俺がリリースするときは、俺のアルバムにフィーチャーして、彼らがリリースするときはフィーチャーされる。そうやって露出する機会をお互いにシェアしているんだよ。ニューヨークのラッパーはそうじゃないだろ? フィーチャーされても、自分のアルバムではフィーチャーしないとかザラだしね。

 

■つまり、ニューヨークのHip Hopはよりアーティスティックで洗練されたイメージを保つことに重きを置きすぎているということですか?

その通り!まさに俺の言いたかったことだよ! その点サウスはすごくシンプルだろ。”楽しむ”ことが第一で、解りやすいビートに解りやすいライム。ニューヨークみたいにやたら言葉を並べたりなんかしないんだ。庭でBBQ、近所の仲間とParty、そんな日常をラップしているんだよ。

 

■あなたにとってのHip Hopの定義は何ですか?

定義って常に変化してるものだと思う。もちろん基本に忠実な人たちもいるけどね。Hip Hopって、いつの時代も若者のムーブメントだと思う。あとはファッションかな。最近は、スタイルやファッションの方がより注目されている気がするね。もちろんHip Hopの原点は、DJ、MC、グラフィティー、ブレイクダンスだけど、”ファッション”は常に存在していたし、よりフィ-チャーされている今の状態は、ごく自然な流れだと思うよ。”独特の音楽”に”個性的なファッション”が今のHip Hopの定義かな。Hip Hopはファッションが驚異的に変化したモノなのかもしれないね。

 

■予想外の答えでした!

どんな答え予想していたの? オールドスクールのウンチク?(笑)

 

■Afrika Bambaataaな哲学

世代が違うからね(笑)。それぞれの時代で、見てきたモノ、感じてきたコトが違うから定義も変わってくるし、これらから先も変化していくと思うよ。

 

■最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

2月発売のBaby Bamのソロアルバムをよろしく!Rick Rossやリナ、DJ 2 Nen、ラナカっていうシンガーをフィーチャーしてる。ラナカはFergieっぽい雰囲気のアーティストで、一緒にやった「Slat」って曲は、女の子向けアンセムだな。”密着して踊ったからって、あんたと寝ないわよ”みたいな内容なんだ。男女共に必聴だ! リリースに合わせてツアーも予定しているから、みんな遊びに来いよ!

 

Interview & Text: Sassyism
Cooperation: STRIDING, Shinuya nuts