リリースのタイミングからは若干遅れをとってしまったが、JAMOSAの話題の新作『LOVE AIN’T EASY』のレビューを書かずして、師走は迎えられない!王道のラブソングはもちろん、手放す愛、ワケありの愛、ペットへの愛 etc…あらゆる”愛”の形、”愛”のスキマを、バラエティ豊かなサウンド、深みを増した表現力を介して訴えかける。

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HIP HOPビートを巧みに乗りこなし、抜群のヴォーカルセンスを魅せ付けたデビューから、女性の本音を代弁し続けた20代を経て、新たなステージに立ったJAMOSA。これまでの1ワードタイトルを卒業して発信する今作『LOVE AIN’T EASY』は、様々な愛の形を題材に、タイトルが示す通り”愛の難しさ”を余すことなくコンパイルしている。

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JAMOSAに多大な影響を与えたレジェンドや、共に切磋琢磨してきた同世代のアーティストたちを”ヒーロー”に見立て、彼女自身が実感/感謝している”Power of Music(=音楽の持つ力)”をシェアしている「HERO」。このタイプのアプローチは、彼女のお家芸であり、同曲をイントロに持ってくるのが何ともJAMOSAらしい。音楽に対する真摯な姿勢を感じさせる、そういった意味での名刺代わりの1曲と言えるだろう。


JAMOSA “HERO”

心地良いレゲエ調のテンポに癒される「KING」(=情報バラエティ『Mr.サンデー』タイアップ曲)や、絶妙なさじ加減の甘さを纏った「SWEET DARLIN’」からは、絶対的な信頼の下に生まれる”愛”を存分に想像することができる。両曲ともに、爽やかで、軽やかで、そして何より、穏やかな雰囲気に溢れ、また、JAMOSAの気持ち良く伸びる歌声は、(ハッピーエンドが)決して夢物語ではないと信じさせてくれる力を持っている。


JAMOSA “KING”

わかっていながらも、心の片隅に生まれる淡い望み、現実を突きつけられたときの行き場の無い気持ち、内に秘め静かに苦しむ心模様……。恋偲ぶ経験をしたことのある女性なら、きっと共感するであろう「ETERNITY」。憂いに満ちた切ない物語を紡ぐJAMOSAは、まさにストーリーテラーであり、もの悲しくも 一片の清々しさを感じさせるトラックは、まるで上質なBGMかのよう。


JAMOSA “ETERNITY”

同様に、「ONE NIGHT STAND」では、スキャンダラスなトピックを、ピアノの音色と融合させ、刹那的な美しさを生み出す。男性によって語られる”一夜限りの関係”は多々あっても、女性視点のソレはあっただろうか? 芯の強さを感じさせながらも、どこか儚さが見え隠れするJAMOSAのヴォーカルは、悲壮美と呼ぶに相応しく、経験値を重ねた女性の”リアル”な心情を表現している。


JAMOSA “ONE NIGHT STAND”

ワケありの愛に涙を渇した後は、バラバラになった”自分”の破片を集める時。人を奮い立たせるための応援歌は多々あるが、押し売りされたポジティブさには、少々辟易してしまう。その点、同様のメッセージを含んでいる「いきてるよ」の秀逸さには頭が下がる。アップリフティングなプロダクション、自然体のリリック、リスナーを励ますというよりも、まるで伴走者のように側にいる気持ちにさせてくれるヴォーカル、この絶妙な三味が重なったことで生まれる”前向き”効果は絶大で、きっと背筋を伸ばして歩き出したくなるハズ。


JAMOSA “いきてるよ”

『劇場版 零-ゼロ-』の主題歌である表題曲「LOVE AIN’T EASY」では、回り道しながらも”自分”を模索し続ける、等身大のメッセージに射抜かれる。この曲も「生きてるよ」同様に、前を向くための曲だと言えるが、口にすることを躊躇しがちな感情を吐き出すことで見えてくる”気付き”や、そこから派生する希望が見えるような、そんな異なるアプローチが面白い。不完全でも、とりあえずの一歩を踏み出そうと思える、また、そのための決意表明をしたくなる、不思議な力をもたらす曲である。


JAMOSA “LOVE AIN’T EASY”

上記以外にも、都会に生きる独身女性の心の叫びを代弁する「LONLEY」、ペットの視点からエモーショナルな世界に誘う「ENDLESS LOVE」、「DESTINATION」では遠距離恋愛を情緒的な表現で魅せている。そして、そして!個人的に一番唸らされたのが、全くベクトルの違うディスコチューン「DANCE」。ドナ・サマーよろしくなサウンドに、日本語&英語を無理無くミックスしたリリック、ノスタルジアを感じさせながらもどこか新鮮なコーラスアレンジ、最高にフェスティブな世界観を作り出すJAMOSAはまさに”マドンナ”そのもの!


JAMOSA “DANCE”

ヴォーカリスト/ソングライターとしての実力や多様性は、これまでの作品でも充分に証明してきたJAMOSA。どちらかと言うと楽曲を通してリスナーを励まし、鼓舞し、前進するヒントを与えてくれるイメージの彼女だが、今作『LOVE AIN’T EASY』では、サウンドのスタイルやトピックに関係なく、優しさや癒しといった、包容力のようなものが滲み出ている気がしてならない。加えて、逞しくも儚く、また、どこか達観しているような印象を受けるのは、彼女自身の経験値に比例して、紡ぐ言葉やそれを表現するスキル、そして何より、生み出す作品から放たれる説得力が増したからだろう。また、サウンド面でも、レッド・スパイダやマニュエル・シールといった、海外プロデューサーを起用してきた彼女が今作でタッグを組んだのは、マドンナやブリトニー・スピアーズのプロデューサーとして知られるジミー・ハリー。(ジミー・ハリー作品「KING」「ENDLESS LOVE」「DANCE」)彼女の抜群のバランス感覚は、邦楽や洋楽といった垣根をスルリと飛び越えて、”JAMOSA”というジャンルに惹き込んでくれるのだ。

冒頭でも記したように、”愛”ゆえに生まれる幾多のシチュエーションが凝縮されている『LOVE AIN’T EASY』。今、あなたが向き合っている愛の形や”スキマ”を、JAMOSAというフィルターを通して体感することで、きっと新たな視点を得ることができると確信している。

text by sassyism

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