B.I.G. Joe & DJ Tama a.k.a. SPC Finest (1/2)からの続き
■B.I.G. Joeさんが6年間という空白の時間を振り返ってどうでしたか?
B.I.G. Joe : ラジオは聴けるから、それなりに現行の音楽の情報は受け取れていたので、みんなが思っているほどの音楽的な空白ってのは無いと思うんだけど、オレが考える空白ってのはオレがその場所にいられなかったってコト。だけどそれは不幸ではなくて、逆に幸だと思っているんだ。塀の中でも限られた中で与えられるモノってのがあって、例えば電話(通話)、カセットテープレコーダー、あとはギターがあったんだよ。電話口でオレがラップして、その後、トラックを差し替えたりも出来る。だから、その与えられた中でヒップホップを表現出来きたんだ。
DJ Tama : それがジョージの『Lost Dope』になったんだよな。 あとは、ジョージが春には帰って来ることがわかった直前の秋頃から、全国どこ行っても「B.I.G. Joeさん帰ってくるんですよね?会いたいっす」って言われたよ。あれは嬉しかったなー。
B.I.G. Joe : 嬉しいね
■異国の地でShyneのように(刑務所の中でレコーディングしてリリース)リリースされて、それって周りのサポートありきですよね。メジャーだとリリースが流れちゃうあたりって、作品の査定に私生活が絡み過ぎてると思うし。
B.I.G. Joe : 行く前にオレがやって来てたことが良かったのかなと思ってる。それで、オレが除外されるべき人間だったら、そこで終ってたと思うんだけど、一緒にやってたマイク・ジャック(Mic Jack Production)のみんなとか、Ciscoのホンダ君とか、オレをどうにか勇気づけてあげたいと思ってくれていたみたいで、マイク・ジャックの方は電話があるなら電話で声で録ろうって言ってくれて、オレの方もカセットテープあるからそれで録ってリールだけ封筒に入れて送ったりとか、そういうことでモチベーションをくれたよね。で、ホンダ君がCiscoのディストリビュートでインディーズ発だけど全国展開してくれたり、そういうサポートが大きかったね。
DJ Tama : マイク・ジャックがジョージが出て来る2009年に向けて、『ROAD TO 2009』って唱って、みんな本当に頑張ってたよ。やっぱりメインのMCが抜けた穴って大きくて簡単には埋められないハズなんだけど、みんなが頑張って良い物を持って『ROAD TO 2009』っていうツアーやっていたよ。
B.I.G. Joe : それがヒップホップだろって感じなのかな、もしかしたら。迫害されたりとか、ゲトーで何も無い状況から表現する、そういう根性がこういうコトになったのかと思う。オレもそういうつもりでやってたし、しぶといっちゃしぶといよね。一昨日、Boss(Tha Blue Herb)とも話してたんだけど、あいつらはライブしに東京に来てて、オレはインタビューを録りに東京にいて、TamaがHarlemのBX CafeでDJしている。もうどう思う?って。
DJ Tama : 15年前じゃ考えられなかったよね。
B.I.G. Joe : そうそう。当時は暗中模索な感じだったからなー。でも、オレ達しぶといなーって思ったよね。しぶとい者が残るんだろうね。
■着実に結果が付いてきているのも理由でしょうね。人が離れていかないのって、そういう信じさせる魅力みたいなのがあるんだと思います。
B.I.G. Joe : ありがたいよな。普通ね、ジェイル(刑務所)とか入ったら離れていきそうなもんだけどね。当時付き合ってた彼女は離れてったけど(笑)。
■オーストラリアだとなかなか会いにも行けないですしね。特に大変なことってどんなことでした?
B.I.G. Joe : 英語とか出来なかったし、そう考えると大変なことは大変なんだけど、死刑になるわけじゃないし、いつかは出られるって思ってたんだよね。判決受ける前は何年になるのかわからないし、周りの囚人たちは「オマエだったら10年だよ」とか、お互い評価し合うんだよね。だから、判決受ける前は不安で。でも判決受けた後は、2009年の2月に帰れるから、それまでに1日1個単語覚えたら帰る頃には英語喋れるようになるだろうし、音楽にも反映出来るようにもなるだろうし、多くのものを出来るだけ吸収して帰れば、日本でやってるTamaやマイクジャックやTha Blue Herbに、また違った影響を与えられるんじゃないかと思ってたんだよね。
DJ Tama : だから、オレもジョージが帰ってきたときに、満足にDJ出来てなかったら悔しいなって思ってたんだよね。Tha Blue Herbもそうだと思うけど、彼らも彼らの道ですごい頑張ってるし。オレはジョージが帰って来たときに、自分でやってる姿を見せたかったのはあるね。
■El Sadiqとはどういった経緯でリンクしたんですか?
B.I.G. Joe : オーストラリアのジェイル(刑務所)にいた6年間は、同じジェイルに6年入るってことはなくて、3年目に移されたジェイルで会ったのがサディーク(El Sadiq)だった。そのジェイルは更生カリキュラムの一貫で、フィットネスのインストラクターになる授業、スモールビジネスの授業、コンピューターの授業、音楽理論、オーディエンジアリング、と、いろいろあって、その中にスタジオがあったんだ。でもその代わり、真面目にやってる囚人しか移されないジェイル(刑務所)だった。オレは早く帰りたいから真面目にやってそこに移されて、アメリカ人なんてほとんどいない中、サディークはブロンクス出身で、好きなスタイルも共通していたし、じゃあ何かやろうってことで、一緒に録ったんだ。でもあいつは大人しいヤツじゃないから、1ヶ月くらいで別のジェイルに移っていったんだけどね。
■オーストラリアのジェイルについて教えて頂けますか?
B.I.G. Joe : 詳しく言うと、5年以上から無期懲役の刑を言い渡された人は、マキシマム・セキュリティ(最上級レベルの警備環境)のジェイルに行かなきゃいけなくて、オレは6年だったから、最低1年はそこで過ごさなきゃいけなかったんだよ。で、オレはそこに2年いて、そこから3年以上5年未満はミディアム・セキュリティ(中級レベル)に移されて、3年未満から帰る日まではミニマム・セキュリティ(下級レベル)で過ごす、と。何が違うかというと、ロック・ダウンされる時間がマキシマム・セキュリティは3時、ミディアムは同じ3時なんだけど、買い物が出来たりするわけ。ミニマムになるといろんなことを学べたり、大まかに言うと帰るための準備をすることが出来るわけ。マキシマムに2年、ミディアムに1年、で、やっとスタジオのあるミニマムに行ける。そういう流れで6年を過ごしてたんだよ。
■アルバムのリリースの際にプロモーション用のミュージック・ビデオを撮ろうとかは思わなかったですか?
B.I.G. Joe : 向こうのジェイルって携帯を隠し持ってるヤツらもいたりして、それでビデオ撮ってるヤツもいたんだけど、オレは与えられたもの(電話)だけを使って表現したかったんだ。中ではいろんな出会いがあって、サディークもそうだけど、オーストラリアのヤツらとリンクするのも面白かったし。オーストラリアっていろんな音楽があって、何でも受け入れる風潮があるんだよね。って、外で遊んだことがないからわかんないけど(笑)。
■海外視野という意味でもTamaさんは海外でゲストDJとしてGIGに参加されていますよね。
B.I.G. Joe : オレが行く前よりTamaのDJスタイルは多面的になってるし、いろんなトコロに顔出して交流を広げて、表現する場を広げてるのが凄いよな。
DJ Tama : 去年(2009年)は、タイ(バンコク)とアメリカ(NY、LA)、韓国(ソウル)の3カ所に行くことが出来たんだよね。正直、海外とか十何年ぶりで。。。でも去年の最初のGIGにあたるタイに行った時、タイのお客さんに対して自分のスタイルで真っ正面からDJしたら、相当盛り上がって、会場のクラブの過去最高の動員数だったんだって。
B.I.G. Joe : すごいね。
DJ Tama : 前日にプレイするクラブを見に行ったら2mくらいのオレの写真付きのバナーが張られてて(笑)。いろんな国の人たちと音楽で対話することですごくオモシロイものが見えるんだってことをタイで実感して。北海道とか札幌とかじゃなくて、音楽を通じたらどこでも行けるんだなって思えたことがオレの中での進化だったかな。
B.I.G. Joe : オレもそれはオーストラリアにいたときに感じた。周りは日本語わからないヤツらだったけど、ギターを弾きながらラップしたりするとみんな反応してくれるわけ。地元を大切にする気持ちはもちろん大事だけど、音楽が流れるだけでいろんなものを超えて一緒に楽しめるってのは実感したね。
■『Lost Dope』、『Come Clean』、『Rise Again』毎回アルバムのタイトルの付け方が、がっちりハマっていますね
B.I.G. Joe : あ、意味わかります!
■個人的にはMixCDの『Pass The Backwoods』ってタイトルが洒落てて好きですねー。
B.I.G. Joe : 笑。タイトルは気を付けているんですよ。
■待望のニューアルバム『Rise Again』も3月3日にリリースしましたね。
B.I.G. Joe : 桃の節句、『Rise Again』。シングルの「Almost Dawn」は、オレの6年間は長い”夜”の時間で、やっと光が見えてきた時(=もう少しで出られる時)に書いた自分を見つめ直した曲なんだよ。フックでも言ってるように、前よりもStronger(強く)でWiser(賢く)になったオレが光の待つ方へ行くんだって気持ちで書いた曲なんだ。
■『Rise Again』の制作期間はどれくらいでした?
B.I.G. Joe : 1年弱くらいかな。でも、内容は帰国前の半年の間に書いた曲がほとんどで、帰国してから録ったのは3曲くらいなんだよね。もう構想は練ってあったしリリックも出来てたから、帰国して直ぐレコーディングして。あとはトラックが決まってなかったから、ここまでかかったって感じ。本当はもうちょっと早く出せたかもしれないんだけどね。でもその間にMixCDの『No Ordinary Joe』や『Pass The Backwoods』も並行してやれたし。
■今まではリリックを先に書いて後でトラックをはめるという方法でしたが、実際のところはどっちの方がやりやすいですか?
B.I.G. Joe : リリックが先に来ることで、トラックが未知な分、後でケミストリーが生まれるよね。先にトラックがある場合は、リリックが未知な分、トラックに沿った、雰囲気に沿った歌い回しとかトピックになったりするんだけど、その差くらいだよね。オレは基本的に自分で一から作るなら、ギター弾きながらの方がやり易いんだよね。勿論ビートから作るときはビート聴きながら作るけど、何も無い状態ならギター弾きながら、リリック書いたりするかな。ギターが上手いわけじゃないんだけどね。
■アルバムにはdj hondaさんも参加されていましたが、地元繋がりもあったりするんですか?
B.I.G. Joe : 正にノースサイドコネクションですね。hondaさん(dj honada)には2曲参加してもらってます。タイミング的にも、hondaさんはずっとニューヨークでやっていらっしゃってて、それってもしかして日本に求めるものが無かったのかなーって思ったし、それは半分解る気がして。で、アルバムのリリースで帰って来たときに、Chocolate FactoryやNorth Coast Bad Boyzだとかシーンがちゃんとあって、DJ Seiji君もいるし、hondaさんにもオモシロイことが出来ると思って貰えたんだと思うんだよね。
■dj hondaさんのカリスマ性は凄いですよね。
B.I.G. Joe : hondaさんはハンパないよ。人間的にも豪快だし。音にも出るしね。
DJ Tama : それにhondaさんは一貫してて常にブレがナイ。その上制作のアプリケーションのソフトとか1番良く知ってるし、アップデートも常にしてる。プロモーションなどの見せ方も凄いし、hondaさんの活動からいろんなヒントを貰えてます。
B.I.G. Joe : 日本のヒップホップの頂点だよね。勝負している場所が違う。
■今後のMic Jack Productionとしての活動も教えていただけますか?
B.I.G. Joe : 今、アルバム作っていて今年中に出す準備を整えてますよ。マイクジャックのMCはオレを入れて4人、DJが3人、トラックメイカーも3人の大所帯だからね。
■今後の活動での意識的な部分なども教えて頂けますか?
B.I.G. Joe : オレ個人としては、フォローの時代は終ったと思っているんだ。結局は、オリジナルにかなうものは無いと思うし。例えばアメリカでもニューヨークでヒップホップが生まれて、L.A.に飛び火してギャングスタ・ラップが生まれて、ベイエリアはハイフィーを、サウスならクランクを生み出して、ヒップホップだけど自分たちのオリジナルのジャンルを作るっていうか。日本って結構、今までは受け身だったと思うんだ。海外から入って来たものを模写して近付けるってのは上手だったと思うんだけど、オリジナルが無いっていうか。だから、フォローの時期を終らせて日本のオリジナルをどんどん作って、それを輸出するようなシーンになっていけばオモシロイと思うけどね。そして日本のオリジナルなスタイルをオレたちが探していかなければいけないんだよね。
■今後のTamaさんの活動はどのような感じですか?
DJ Tama : 今は、制作中のソロアルバムを今年中にリリースしたいなと思ってます。2ndアルバムになるんだけど、ジョージにも1曲録ってもらうのでお楽しみに。
B.I.G. Joe : どんな曲になるんだろうね~~~
DJ Tama : ヒップホップも勿論だけど、今の自分のDJプレイを反映させたアルバムにしたいと思ってます。なのでカラフルな感じになりそうです。それと、今年は去年以上に道外や海外でのDJプレイを積極的にやってきたいと思ってます。
■最後にファンのみなさんにメッセージをお願いします。
B.I.G. Joe : 3月3日にオレの3rdアルバム『RIZE AGAIN』をリリースして全国をツアーを回って、その中でマイクジャックの3rdアルバムを作ってます。それとノースサイドコネクション(North Side Connection)は、さらにもっといろんな人へと飛び火させて、その活動も頑張りたいですね。それと、ハイチが大変なことになっているし、音楽を介してお金を集めて協力していきたいと思ってます。あとは、今、不景気で何処も大変だけど、資金が無い中で何が生み出せるかって”アイディア#だと思うので、そのアイディアを使って生活をして欲しいですね。
DJ Tama : 北海道から全国、そして世界へ向けて音を発信し続けるんで、近くの街に行った時には、是非会場に遊びに来て、生で俺のDJを体感して下さい。今年はDJ Tama名義でのソロ2ndアルバムもリリース予定です。自分が主催しているch-B Recordsからは、韻牙ランドなどのアーティストの作品もドンドンリリースして行きます。北海道のシーンをこれからも注目していて下さい。
more info: B.I.G. JOE (TRIUMPH RECORDS) – official site
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more info: DJ TAMA a.k.a. SPC FINEST – official site
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interview & text by sassyism