■デトロイトを基盤として活躍する貴方ですが、生まれも育ちもデトロイトなんですか
デトロイトで生まれて育ったよ。幼い頃に両親が離婚して、ちょっとだけアーカンソー州に住んだこともあるけど、ほんの3年間でそれ以外は、ずっとデトロイトだ
■音楽に携わってどれくらいですか?また、ライムし始めたのいくつのときですか
オレの人生と音楽は、常に表裏一体だと言えるけど、そんなに真剣に考えたことはなかったんだ。曲を書いたり、レコーディングしたり、特に何も考えずに12年くらいやってたかな。でも、子供が生まれてからは、”キャリア”として向かい合うようになったかな
■NY、カリフォルニア、サウス同様に、デトロイトにも確立したスタイルが存在しますが、貴方の曲にもそのスタイルを存分に感じます。意識的にそうしているのか、ごく自然な流れなのか、どう思われますか
すごく自然なことなんだと思う。というよりも、オレ自身、自分の音に気を配ったことがないんだ(笑)。一般的に認識されているデトロイトのスタイルは、モータウンに代表されるソウルを取り入れたHip Hopだと思うんだけど、意外にデトロイトにはいろんな種類の音楽が混在しているんだ。もちろん、ソウルミュージックの放つヴァイブスは大好きだけどね。デトロイトは、テクノ発祥の地だし、ゴスペルもかなり大きいシーンがある。ジャズやブルースも盛んなんだ
■シングル「dumbstruck」は、貴方の曲で一番のお気に入りです。暖かくて、優しいトラックに、ウィットに富んだリリックが洗練されている印象を受けました。1990年代Hip Hopをフラッシュバックする雰囲気だったと思ったのですが、リリックを書くとき、トラックを選ぶときに意図的に取り組むことはありますか
あのトラックにみんながどう反応するか心配なトコロだったんだけど、オレはとにかくたのトラックで楽しみたかったんだ。トロントに住んでる友達ブラズのプロダクションだよ。リリックを書くときに意識することって特に思いつかないんだけど、トラックが導いてくれるままに、惹き付けられているだけだよ。「dumbstruck」に関しては、あのトラックに合せてライムしたワケじゃなくて、Dweleのアルバム『Subject』を聴きながらフリースタイルしたものが最初だったんだ。『Subject』は、何時間も通して聴くくらい好きなアルバムだね
■84 Tigers、DJ Primeminister、Autopilotsとの関係をおしえてください。
84 Tigersと一緒に、『Stoopz And Breeze』というプロジェクトを進行中なんだ。84 TigersがStoopzでプロダクション全般担当で、オレがBreezeでライム担当だ。コンセプトのキャラに成りきって楽しんでるよ。ドナルドダックとマイアミ・ヴァイスの融合って感じかな。’80年代のフレイヴァー満載だよ。84 Tigersはオレの飲み仲間でもあるんだ(笑)。DJ Primenisterとは、1995年からの付き合いだな。ターンテーブルを操るPrimenisterはかなりクレイジーだぜ。Atuopilotsも含め、みんなオレの仲間だし、その内、世界中が注目することになるハズだ
■デトロイトシーンの新鋭として、期待の高まるデビューアルバムのリリースはいつですか
期待を持ってもらえるってのは嬉しいね。その内、実現する予定だよ。2006年の11月に限定で『Insomnia Music』をドロップしたんだけど、ちょっとした手違いがあって収録された曲から取り除かないといけない曲が出て来ちゃってさ。かなり残念だったけど、どうしようもないだろ?で、去年の10月に新たにリリースしたんだけど、たくさんの人から反響があったと同時に、取り除いた曲に対しての意見も多数寄せられたよ。あとは、84 Tigerと一緒にストリートアルバム/コンピレーション『Scandinavia』を9月にドロップしたよ。あくまで”ストリートアルバム/コンピレーション”であって、Mixtapeって呼ばれるのは嫌だね
■音楽的に影響を受けたアーティストをあげるとすると?また、その理由もおしえてください。
音楽的には、John Coltrane、Stevie Wonder、Earth, Wind & Fireだね。彼らの音楽は、とても現実味があるんだけど、同時に気分良くさせてくれるヴァイブスなんだ。ラップに関して言うと、N.W.A.の影響を強く受けてると言えるかな。N.W.A.は、マチガイなくオレが一番好きなラップグループだし、彼らを超えるグループは出てこないと言い切れるね。初めて彼らの音楽に出会ったのは、11歳のときだったけど、警察に対してあんな風にスピットして捕まらないのがとにかく衝撃的で、それ以後は大ファンだよ
■あなたにとってのHip Hopの定義はなんですか?
Hip Hopは、文化であり、ライフスタイルであり、思想だよ。Hip Hopは情熱的で興奮作用のあるモノなんだ。肌の色や人種なんて関係無い。想像力と独創性が全てだ。ときに正当な評価を受けない場合もあるけど、素晴らしい芸術だと思うね。最近は、Nasの”Hip Hop Is Dead”ってタイトルを引用したがるけど、オレも全く同じことを1995年から言い続けてきた。Nasが意図したことにオレは100%同意するね。強いて言うなら、第一回目のソース・アワードがHip Hopの欠落を招いたと思ってる。組織化、インターネットの普及、ブートの増加、レーベルの崩壊、もちろんこれらにも原因はあるけど、オレたちは、あのソース・アワードから完全に立ち直っていないと思うね
■最近のシーンについての意見と、今後Hip Hopがどう発展していくかについて、意見を聞かせてください。
ここ数年のリングトーン・ラッパーの台頭は目を見張るものがあるね。今後しばらくはその状態が続くと思う。再生するまでには、とことん落ちるとこまで落ちるってのが常だからな。アメリカが、”平凡”であることを褒賞している今、オーバーサイズを好む人間は隠れるしかないんだよ(笑)
■現在取り組んでいるプロジェクトは?
『Stoopz And Breeze』の他には、超極秘で勧めてるプロジェクトがあるんだけど、HipHopDicitonaryにちょっとだけ教えてやるよ。元Sulm VillgaeのBaatinと一緒にアルバムを制作中なんだけど、タイトル含む詳細はまだ未定のままだ。オレの仲間でノルウェー出身のIntactがトラック全般を手掛けていて、かなりドープな作品になるハズだ。その内、耳にすることになるよ
■Mixtapeやコラボ、携わった作品について聞かせて下さい.
長年Mixtapeシーンにいたから、全部は覚えてないけど、ロシア出身のDJ、DJ NavvyやPhat KatのDJ、DJ Grafiti、トロント出身のBaby Yu、その他にも地元ミシガンのアーティストのMixtapeに参加してるんだけど、数がありすぎて覚えきれないんだ。コラボに関しては、UK出身のFolk/Blues/Jazzアーティスト、STANとの作品が印象的かな。あんなに緊張したのは初めてだったよ。彼らは、ストイックなミュージシャンたちだからな。オーストラリア出身のR&Bシンガー、Jeff Sheppardとのコラボや、ドイツ出身のSuff Daddyは、何曲かRemixを手掛けてくれたよ。UK出身のJewbeiとも何かやろうって話してたとこだ。あ、そうそう、ヴァージニアにいるVan Arkが年末に『Chemical Beats』っていうアルバムをドロップしたんだけど、そのアルバムにもカリフォルニア出身のAstroってアーティストと一緒に参加してる。あとは、Cold Crush BrothersのPrince Whipper Whipともアルバムを制作中だよ。アメリカ国内はもちろん、海外からも客演のオファーをたくさんもらってるんだけど、まだまだ手をつけられてないのも沢山あるんだ。時間を有効に使わないとな(笑)
■Slum VillageのElzhiとの写真を拝見しました。デトロイトのコミュニティも昔のNYのようにタイトなのでしょうか?
デトロイト出身のアーティストだったら、メジャーで活躍してようと、ローカル規模だろうと、お互い顔と名前くらいは知ってるよ。みんなが想像しているような結束力はないけど、リアルなヘッズだって自負してるヤツらだったら、相通じるものがあるんだ。デトロイトのシーンもフェイクなヤツらが多いからな。Elはクールなアーティストだし、リスペクトしてる。あの写真のオレの顔、ハイすぎて酷いよな(笑)
■最後に、日本のアーティストやヘッズに一言お願いします
ハッスルし続けることだ。例え扉が閉まっていても、他に開いてる扉は必ずあるハズだからな。日本国内だけに目を向けるんじゃなくて、海外のインディーアーティストたちとも積極的にコンタクトを取ることも一つの手段だとオレは思ってるよ
Interview & Text: sassyism